2018.12.20 教えて!ドクター
☞ 「病院を探そう!」大阪大学医学部附属病院のご紹介ページ
Chapter 4: 今後の挑戦とメッセージ
-----移植後、一番うれしかったことはどのようなことですか。
高須さん:
食事制限が無くなったことです。移植コーディネーターの方からは、移植前に透析を受けていた患者さんの場合は、移植後の注意点(決められた時間にきちんと服薬する、食べてはいけないものを食べない、水分を十分に取るなど)をきちんと守る方が多いのですが、透析を受けていない方の中には、注意点を守らない方がいらっしゃるという話をされ、私はかなりくぎを刺されました。
-----移植後は体感的な変化はありましたか。
高須さん:
移植後は移植前と比べてとても元気になったと感じます。精神的にも肉体的にも何もかもが良くなりました。移植前と違って、動けますし、動いても全然疲れません。
-----現在はどのようなことに気を付けて生活していますか。
高須さん:
きちんと服薬すること、水分を取ること、食べてはいけないものは食べないようにすることなどです。しかし、移植前の状態を思えば、それらを守ることは苦痛でもなんでもありません。
食べ物に関しては、生ものには特に注意しています。私は寿司と焼肉が好きなのですが、今村先生からは、「生ものは、移植後1年間は控えるように」と言われていたので、1年間は食べませんでした。それ以降は先生と相談して、少しずつ食べ始め、今は、お寿司は食べています。ただ生肉はもちろん食べていません。
-----阪大病院では、移植後の食事(生もの)に関してどのような指導を行っているのですか。
今村先生:
現在の免疫抑制療法を考慮すれば、生ものも、もう少し早くから摂取できるのかもしれません。ただ感染症が遷延すると免疫抑制剤のコントロールにも影響が出ますので「1年間は不可」と少し厳しく指導しています。ご存じのように阪大病院は、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸の全臓器の移植が可能な施設です。移植する臓器によっては一生生ものを摂取しないように推進している場合もあります。各臓器で異なった免疫抑制療法を行っていますが、それら全体の経験をもとに、腎移植後1年間は控えるように推奨しています。食事に関して、生もの以外には塩分摂取量の指導のみ厳重に行っています。高血圧は移植腎生着に影響が出ることを考慮し、24時間蓄尿検査時に塩分摂取量を計算し、栄養指導に役立てるようにしています。
-----高須さんは、移植後はお仕事も精力的にされているということですね。
高須さん:
私は今年70歳なのですが、朝から晩までパソコンで作業をしたり、車を運転したりと、フル稼働で働いています。今の目標は医療ビルを建てることです。皆さんのおかげで、このような元気な体を取り戻すことができましたので、この目標に向かってやり遂げたいと思っています。
-----移植後、義弟さんとはよく会うのですか。
高須さん:
義弟は近所に住んでいますので、週に1~2回は一緒に家で食事をします。
もし義弟がいなかったら、移植を受けていたかどうか分かりません。本当に感謝しかありません。
-----最後に、高須さんと今村先生から、腎援隊をご覧の慢性腎臓病患者さんへメッセージをお願いします。
高須さん:
私は透析を受けておりませんので、腎移植を経験したものとしてお話させていただきます。私も最初は自分が腎移植を受けるとは夢にも思っていませんでしたが、家族に支えられ、信頼できる病院、先生方に出会うことができ、腎移植を受けることができました。現在は何の束縛もなく毎日元気に仕事もできています。
現在、治療法を検討している皆さんも、ご自身、ご家族が納得できる病院、先生を探して受診してください。そして、もしドナーとなっていただける方がいらっしゃるのであれば、心配せずに安心して腎移植に臨んでほしいと思います。
今村先生:
年齢で言えば、高須さんはいわゆる「高齢者移植」患者さんに分類されます。一般には、腎移植はある程度若くないと受けられない、と勘違いされていることが多いように思います。しかしながら高齢者末期腎不全患者さんは、全身状態に問題がないのであれば、透析治療を選択するよりも腎移植を選択した方が生命予後が良くなる(寿命が延びる)と報告されています(*)。
阪大病院では、検査上可能な限り高齢者腎移植を積極的に受け入れる方針にしています。腎移植を希望されるのであれば、年齢だけであきらめることなく専門医を受診いただきたいと思います。
☞ 「病院を探そう!」大阪大学医学部附属病院のご紹介ページ
☞ 【参考】
腎移植者インタビュー
生体腎ドナーインタビュー
透析患者インタビュー
<出典>
* USRDS. 2023 Annual Data Report//End Stage Renal Disease:Table 6.1