生体腎移植者の体験談｜山上隆さん_3 | 家族と考える慢性腎臓病サイト腎援隊

Chapter 3：　移植後の生活

-----そしていよいよ手術の日を迎えたわけですね。手術が終わった時のことは覚えていますか。

山上さん：
とにかく妻のことがとても心配でした。大丈夫だと聞いて安心したら、傷の痛みを感じ始めた気がします。

奥様：
私は、麻酔で手術中のことはまったく覚えていない状態で、手術が終わったということ自体、実感がありませんでした。術後は痛み止めの薬の副作用で少し吐き気がありましたが、それ以外の不快な症状は全くありませんでした。その後、痛みを感じることもあまりなく、お見舞いに来た人に笑わされたときや、くしゃみをしたときにお腹の傷が少し痛かったくらいです。

-----先生、ドナーの方は術後、痛みを訴えられることは多いのでしょうか。

荒木先生：
痛みには個人差があります。術後3～4日くらいは痛いと言う方が多いです。4日過ぎると痛みもなくなるようで、皆さんシャキっとされますね。

-----術後、つらいことはありましたか。

山上さん：
ICUを出るまでは尿道カテーテル（※）が入っているにも関わらず、尿が出ていく時にすごく痛みを感じました。尿道カテーテルが抜かれた後は楽になり、他につらいことはありませんでした。
※尿道カテーテル：尿道といわれる膀胱から出る管に挿入し、膀胱にたまった尿を排出させるためのチューブのこと。

-----先生、レシピエントは手術後どのくらいで退院するのですか。

荒木先生：
当院では、術後1週間で尿道カテーテルを抜き、山上さんが手術した当時は3～4週間後に尿管ステント（※）を抜いていたと思います。現在尿管ステントは術後2週間で抜いています。現在は尿管ステントを抜いた後に一度帰宅してもらい、外泊が問題ないことを確認して術後3週間くらいで退院となります。
退院後しばらくは1～2週間に1回、3カ月後くらいから月1回程度の通院頻度になります。その後状態が落ち着いている方は3カ月に1回程度の通院になります。
※尿管ステント：尿管に入れる細い管（チューブ）のこと。

-----退院後、何かつらいことはありましたか。

山上さん：
特にありません。

奥様：
私もありませんでした。入院中も、病院の先生やスタッフの方々にもとても良くしていただきましたし、院内の設備も良く、なんて快適な環境なのだろうと思っていました。

-----移植後、一番うれしかったのはどのようなことですか。

山上さん：
体調が良くなり、素潜り、カヌー、スキーなど、大好きなアウトドアを家族と満喫できるようになったことです。

奥様：
主人は、移植前は、なだらかな山でも歩きだしてすぐに息切れするような状態でしたが、移植後は皆と同じペースで登れるようになり、心配することなく一緒に遊べるようになりました。
移植後はいろいろな制限から解放されて本当に良かったですし、食事の制限も透析時代よりは軽減され、一緒にお酒を飲んだり食事をしたりできるようになったことも本当にうれしいです。ただ、最近主人は少し太ってしまったので注意しなければと思っています。

②移植後

-----移植後はどのようなことに気を付けて生活していますか。

山上さん：
毎日同じ時間に起床し、就寝し、服薬し、食事に気を付けることを心がけています。また、移植後6年経った今でも、人混みの中ではマスクをするなどして、感染にも気を付けています。

-----有森さんは移植後の患者さんの自己管理についてどのようなお話をされることが多いですか。

有森コーディネーター

有森コーディネーター：
薬を指示通りに飲むことはもちろんですが、生活リズムを整えることや、体重、血圧などの自己管理を徹底してほしいとお話ししています。

-----移植後、体重が増えてしまう患者さんも多いと聞きますが、こちらの病院では、体重管理についてはどのような指導をされていますか。

荒木先生：
当院では移植後の定期外来の際に診察室の中に体重計を置いて、毎回、私の目の前で体重計に乗ってもらっています。始めこの方式を導入したときは少し気の毒にも思っていましたが、肥満は移植腎の長期生着に悪影響を及ぼすので、重要性を理解していただくためにもこの方式を続けています。診察時の体重を過去5回分くらいは時系列で見ることができるようにしていますので、1回の診察で体重が増えたからといって厳しく注意はしませんが、毎回増え続けている人には体重を減らすように注意し、指導します。ご本人が管理できることとして、服薬管理と体重管理はとても大切です。体重が増加し過ぎると血圧も血糖値もコレステロール値も尿酸値も上がりますし、長期的には腎機能にも悪影響が出てきます。

有森コーディネーター：
山上さんも長期生着を目指すために、体重管理には気を付けてくださいね。