2018.12.20 教えて!ドクター
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Chapter 3: 腎移植との出会い
----- どのような経緯で腎移植を受けることになったのでしょうか。
松尾さん:
シャントの血栓除去は年に数回、名古屋第二赤十字病院(現 日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第二病院)で行ってもらっており、いつも主人と一緒に通院していました。ある時、担当の先生から「生体腎移植については考えていますか?」と主人へお話しいただいたのがきっかけです。主人は自分がドナー(腎提供する人)になれる可能性があることを、その時初めて知ったそうです。
----- ご主人の方から、腎移植を考えてみようという話があったのですか。
松尾さん:
はい。私のシャントトラブルの頻度があまりに多かったので、主人は常に心配だったようです。
その後、生体腎移植について名古屋第二赤十字病院で詳しくお話を伺ったのですが、初めて耳にする話が多かったです。ドナーとレシピエント(腎移植を受ける人)の血液型が違っていても腎移植ができることも、その時初めて知りました。
☞ 参考:腎移植の基礎知識「ABO血液型不適合移植」
----- 後藤先生、腎移植について一般の方が誤解されていることには、どのようなことがありますか。
後藤先生:
最近は少なくなりましたが、高齢だと腎移植ができないとか、ドナーとレシピエントの血液型が一致していなければできないと思われている方がいらっしゃいます。献腎移植の登録更新※のために来院されているご夫婦に「生体腎移植は考えないのですか?」とお聞きすると、「血液型が違うからできないですよね?」と言われることがよくありました。今でもその誤解はあるようです。
※ 献腎移植を受けるためには、日本臓器移植ネットワークに移植希望登録をし、その後は年1回以上、腎移植を希望する施設で診察、評価を受けて登録情報を更新していく必要があります。
☞ 参考:腎移植の基礎知識「高齢者の腎移植」
----- ご主人から腎提供の話をされて、どのように思いましたか。
松尾さん:
とてもありがたいとは思いましたが、腎臓を提供することで、私だけでなく主人の健康も損なわれてしまうのではないかという不安が大きかったです。しかし、名古屋第二赤十字病院の先生方が、私たちが納得のいくまで主人の体を詳しく検査してくださり、安全に腎提供することが可能という診断結果がでましたので、その不安も小さくなりました。また、主人の腎提供の気持ちも強かったので、その気持ちも受け取り、腎移植をお願いすることになりました。
----- 腎移植を受けて良かったと感じるのはどのような点ですか。
松尾さん:
私は透析を受けている間もそれほど不自由は感じていなかったのですが、尿が完全に出なくなってからは、トイレに行く夢ばかり見ていました。移植手術が終わって、看護師さんから「おしっこがいっぱい出ていますよ」と言われたときには、すごく嬉しくて感動しました。頭の中にかかっていた霧がぱっと晴れたように感じられました。
また、家庭にもより時間をかけられるようになりました。主人の父を自宅で介護することもできましたし、離れて暮らしている娘の体調が悪いときには、毎日通って面倒をみることもできました。今は実家にいる私の母や、介護施設に入っている父の世話をしていますが、それができるのも腎移植のおかげだと思っています。
移植後の松尾さん。2人の娘さんの結婚式にて(一番左がドナーとなったご主人)
----- 現在、不安に思っていることや、不便に感じていることはありますか。
松尾さん:
免疫抑制薬を服用しているので、がんや感染症といった病気にかかりやすくなることに多少の不安はあります。ただ、名古屋第二赤十字病院で定期的に主人と一緒に移植後のフォローアップをしていただいているので、もし何かあってもすぐに相談できる、また早期に対応してもらえる安心感があります。実際、腎移植とは関係ないのですが、フォローアップ外来の検査でホルモンの分泌異常が見つかり、すぐに専門の先生にご紹介していただけました。腎臓だけに限らず、体調全般を管理していただけるので、大変助かっています。
もう1つ、困っている点を強いて挙げるとすれば、食欲がありすぎることでしょうか(笑)。塩分制限は継続していますし、朝晩体重も測定して、できるだけ運動をするようにしているのですが、少し食べ過ぎて体重が増えてしまうことがあります。
後藤先生:
もちろん自己管理は大切ですが、食欲があるのは腎移植がうまくいっている証拠でもあるので、必ずしも悪いことではないと思いますよ。
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☞ 【参考】
腎移植者インタビュー
生体腎ドナーインタビュー
透析患者インタビュー