ドクターコラム

透析療法概論

透析療法概論

東邦大学 医療センター 大森病院 腎センター 教授 酒井 謙 先生

東邦大学 医療センター 大森病院 腎センター 教授
酒井 謙 先生

透析療法概論

掲載日:2016/04/07

1.はじめに

腎臓の働きがとうとう10%以下にまで低下すると、自分の腎臓で自分の体を浄化しきれなくなり、老廃物が蓄積して倦怠感、食欲低下、悪心、嘔吐、頭痛などの尿毒症状が出現し、心不全や肺水腫を起こし、息切れや呼吸困難が出現しやすくなります。放っておけば命にかかわってしまいます。命をつないでいくために、ご自身の腎臓をあきらめて、代わりに透析療法で血液を浄化するか、もしくは腎移植を受ける必要がでてきます。

透析療法は、現在、我が国において約33万人の患者さんが受けている治療法です(2016年末時点(*1))。透析を行うことで、ある程度まで普通に生活することが可能になります。ただし、透析療法そのものに腎臓をよくする作用はなく、腎臓の働きを完全に補うものでもありませんので、腎移植をしない限り、生涯続けていく必要があります。また、透析を長く続けることで合併症も生じてきます。
腎移植は、腎臓のほぼすべての機能を補うことができる治療法で、透析療法よりも患者予後(元気でいられる可能性)に優れています。現状、年間1,600例程度の腎移植が行われており(*2)、既に我が国では普遍的な治療です。近年では、透析療法を経ることなく腎移植を行う“先行的腎移植”も注目されています。

透析療法には、血液を透析器を介してきれいにして戻す「血液透析」と、おなかにカテーテルという管を入れて、透析液を出し入れする「腹膜透析」があります。
血液透析は、透析療法の代表選手であり、全国の透析患者さんの97%がこの治療法を選択しています(*3)。腹膜透析と比較して、小分子から中分子の除去、すなわちすべての毒素の除去に優れています(たくさんの毒素が除去できます)。
一方、腹膜透析は、血液透析と比較して残存腎機能(尿を作って排泄する残存能力)の保持に優れているといわれています。血液透析が、一般的には透析施設にて週3回ほど行われるのに対し、腹膜透析は、主に毎日自宅で、ご自身で透析をするという点でも異なります。
近年では、残存腎機能を保持するために、腎機能が残っているうちに、まず腹膜透析から透析を開始する考え方があります。残存腎機能が喪失されたときに腹膜透析だけでは十分な透析ができない場合は、血液透析と腹膜透析の併用療法、あるいは血液透析や腎移植に切り替えます。
ここでは、透析療法(血液透析、腹膜透析)について、そのしくみや治療中の実生活などを説明します。

2.血液透析

まず、血液透析のしくみを説明します。血液透析においては、腕の動脈と静脈をつなぎ合わせて太くなった血管、「内シャント」に針を刺し、ポンプをつかって血液を体の外に取り出します。取り出された血液は「ダイアライザー」と呼ばれる透析器に運ばれます。

透析

ダイアライザー

ダイアライザーとは、小さな穴が無数に開いた細いストロー状の膜を約1万本束ねたもので、この穴は、血球成分やタンパク質は通過せず、それよりも小さな物質だけが通過するようになっており、腎臓と同じようにフィルターの役割をします。そのストロー状の膜の内側に血液が送り込まれ、圧力で余分な水分や塩分などが押し出される一方で、外側にきれいな透析液を流すことで、老廃物やカリウム、リンなどが血液から透析液の方に移動して除去されます。逆に、カルシウムや重炭酸イオン(アルカリイオン)などは透析液から血液に移動して体に補充されます(この物質の移動を「拡散現象 」といいます)。不要なものが除去され、また必要なものが補充された血液は、回路を介して体に戻されます。これが血液透析のしくみです。
血液透析を行うと、血液は浄化され、それに伴って食欲低下、倦怠感、呼吸困難などの症状も改善します。

紅茶

※ 拡散現象
お湯に紅茶のティーバッグを入れると、紅茶の葉自体はお湯に移らずバッグ内に残りますが、お湯がゆっくり紅茶色になります。このときのティーバッグ(半透膜)を用いた紅茶の色の染みだしが拡散現象で、透析の基本原理です。


一般的な血液透析は、1回あたり約4時間かかり、週に3回の通院が必要です。週当たり約12時間を透析に費やすことになりますが、血液の浄化にかける時間としては、12時間を費やしても正常な腎臓の10%ほどしか補えないので、短いことはあっても長すぎることはありません。ただし、この頻回の通院と時間的拘束、および透析毎の針刺し(内シャントに血液を出し入れするための太い針を2本刺します)は患者さんの大きな負担です。
透析と透析の間の普段の生活、特に食生活を自己管理することも大事です。透析をしていても腎臓の機能は低下していき、最終的にはおしっこが出ないようになりますが、おしっこが出ない分、飲食をすれば体内に水分が溜まり、心臓などの臓器に負担がかかります。また、余分な水分が多いと、透析時の循環動態が不安定になります(血液中の水分を短時間でたくさん除去することによって血圧が下がります)。よって、水分や塩分などを取りすぎないように日ごろから注意する必要があります。

☞参考 透析ライフ:通院血液透析の生活パターン

在宅血液透析
血液透析は、一般的には透析施設に通院して行いますが、自宅で行う「在宅血液透析」という方法もあります。この場合、自宅に血液透析用の機械を置き、水道水で透析液をつくります。自宅で通院透析よりも多くの透析をすれば(例:短時間の透析を毎日行う)、体内の老廃物が少ない状態を維持できます。ただし、自宅に機械を置くスペースを確保し、内シャントにご自身で針を刺す技術や、機械を操作するノウハウを身につける必要があります。
在宅血液透析は1998年に保険適用となり、2016年末の時点では全国で635人の患者さんが行っており(*1)、今後も増加していくものと思われます。

☞参考 透析ライフ:在宅血液透析の生活パターン

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<出典>
*1 日本透析医学会 統計調査委員会 図説 わが国の慢性透析療法の現況(2016年12月31日現在)
*2 日本臨床腎移植学会・日本移植学会 腎移植臨床登録集計報告(2018) 移植 2018;53:89-108
*4,5 イラスト原画 東邦大学医療センター大森病院 腎センター ホームページより


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