ドクターコラム

移植腎の生着率と患者生存率について

移植腎の生着率と患者生存率について

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター 移植内科 部長
後藤 憲彦 先生

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター 移植内科
部長 後藤 憲彦 先生

移植腎の生着率と患者生存率について

掲載日:2017/02/10

日本における腎移植の「生着率」と「生存率」

「生着率」と「生存率」はいずれも、腎移植の成績を示す重要な指標です。2017年時点の日本での腎移植後5年生着率は生体腎移植で94.3%、献腎移植で88.0%、10年生着率は生体で85.2%、献腎で70.7%です。5年生存率は生体腎移植で97.1%、献腎移植で93.1%、10年生存率は生体で92.0%、献腎で81.4%です(*1)。生着率、生存率ともに年々向上しています。この最大の要因は、免疫抑制薬の進歩です。

生着率と生存率

免疫抑制薬の進歩による腎移植医療の発展

腎移植は、他人の腎臓をレシピエント(移植を受ける患者さん)の体内に置くことです。人間には免疫というシステムがあり、“自分のものではない異物”が体内に侵入すると、それを排除しようとします。そのため、腎移植の際にはレシピエントの免疫反応を抑制しなければ、ドナーからの腎臓を自分のものではないと判断して拒絶します(拒絶反応)。
免疫抑制薬の種類が少なかった時代には、他人の腎臓を長くとどめておくことができませんでした。また、少しでも長くとどめようとして免疫抑制薬の量を多くした結果、感染症や癌などで亡くなられることもしばしばありました。当時は双子や親子間でのドナーを選ぶ必要があり、腎移植は選ばれた腎不全患者さんだけに提供される医療でした。

夫婦間移植
しかし、免疫抑制薬が進歩した最近では、状況は一変しました。種類の増えた免疫抑制薬を組み合わせることにより、ドナーからの腎臓をレシピエント自身のものであるかのように長く置いておくことができるようになりました。それぞれの免疫抑制薬の量も少ないですから、感染症や癌も減りました。以前は成績が悪くて移植することができなかった、夫婦間移植血液型不適合移植や抗HLA抗体陽性移植も可能となりました。

※抗HLA抗体陽性移植:HLAはあらゆる細胞の表面にある物質で、妊娠歴や輸血歴がある患者さんや、以前に移植を受けたことがある患者さんでは、ドナーのHLAに対する抗体を持っていることがあります。このような場合に行う移植のことを抗HLA抗体陽性移植といいます。

また、移植ができる原疾患も広がりました。現在、腎不全になる一番多い原因は2型糖尿病ですが(*2)、以前は免疫抑制薬で糖尿病自体が悪化するために移植は避けられていました。最近では逆に、2型糖尿病を原疾患とする腎不全ほど腎移植の良い適応となっています(*3)。このようなハイリスクの腎移植候補者が増えているため、全体の生着率、生存率は今後あまり向上しないかもしれません。選ばれた腎不全患者さんにだけ提供されていた腎移植でしたが、今では腎移植ができない患者さんはほとんどいません。かつては移植が困難とされていたハイリスク患者さんの生着率や生存率をいかに向上させるかが今後の課題です。

☞ 参考:教えて!ドクター「Q. 腎移植と透析、それぞれの治療成績(生存率)を教えてください。

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<出典>
*1 日本臨床腎移植学会・日本移植学会 腎移植臨床登録集計報告(2018) 移植 2018;53:89-108
*2 日本透析医学会 統計調査委員会 図説 わが国の慢性透析療法の現況(2016年12月31日現在)
*3 R.A. Wolfe and others. Comparison of Mortality in All Patients on Dialysis, Patients on Dialysis Awaiting Transplantation, and Recipients of a First Cadaveric Transplant. N Engl J Med 1999;341:1725-1730


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