教えて!ドクター

Q

腎移植と透析、それぞれの
治療成績(生存率)を教えてください。

腎移植と透析、それぞれの
治療成績(生存率)を教えてください。

回答いただいた先生
伊丹腎クリニック 院長 伊丹 儀友 先生
伊丹腎クリニック 院長 伊丹 儀友 先生
腎移植と透析、それぞれの治療成績(生存率)を教えてください。

掲載日:2017/12/14

A

一般的に、腎移植の方が透析よりも生命予後が優れているとされています。透析患者さんと腎移植を受けた患者さんの平均余命を年代ごとに比較した米国のデータがありますが、どの年代においても、平均余命は腎移植を受けた患者さんの方が長くなっています(*1)

腎移植と透析の生命予後比較

透析は、腎臓の代わりに体内の余分な水分・塩分や老廃物を取り除いてくれますが、健康な腎臓と全く同じ働きができるわけではありません。また、透析だけでは代替できない腎臓の機能もあります。そのため、長い間透析を行っていると、高血圧や動脈硬化などのさまざまな合併症を起こしやすくなります。これらの合併症が悪化すると、心筋梗塞や心不全、脳梗塞といった病気を引き起こす場合があります。
腎移植は、移植した腎臓の機能が安定していれば、ほぼ完全に腎臓の機能を代替することができます。そのため、透析に比べると合併症を起こしにくく、心筋梗塞や心不全、脳梗塞などを起こすリスクも低くなります(*2)

ただし、腎移植後に、移植した腎臓が必ずしも一生機能し続けてくれるとは限りません。移植腎が拒絶反応などによって機能を失い、透析導入や再移植が必要になる場合もあります。
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しかし近年では、拒絶反応を抑える免疫抑制薬の進歩などによって、移植腎が機能している期間の成績が向上しており(*3)、より長い期間、透析をせずに生活できるようになってきています。また、腎移植後に生存できる期間も同様に、近年成績が向上しています(*3)

☞ 参考:ドクターコラム「移植腎の生着率と患者生存率について

一方で、透析も進歩を続けています。特に日本は、世界的に見ても透析患者さんの生命予後において優れた実績があります。以下のグラフは、日本と米国の透析患者さんの平均余命を年代別に比べたものですが、どの年代においても、日本の透析患者さんの平均余命の方が長くなっています(*4,5)

透析患者の余命の日米比較

また、2021年末時点で、30年以上透析を続けている日本の透析患者さんは全国で約8,000人となっています(*6)

一般的な血液透析では、週3回透析施設に通い、1回あたり4~5時間の透析を行いますが、1回あたりの透析時間を6時間にすると生命予後が改善されるという報告もあり(*7)、近年では、週3回、1回6時間以上の長時間透析オーバーナイト透析を含む)も行われるようになってきました。また、医師との相談の下に透析時間や回数を自由に設定できる在宅血液透析を行う患者さんも少しずつ増えています(2021年末で748人(*6))。

長時間透析とHHD

腎移植も透析も、治療成績やQOL(生活の質)を改善する試みが続けられています。末期腎不全の治療法を選ぶときには、まず腎援隊で調べたり、治療選択の相談ができる病院で説明を聞いたりして、それぞれの治療法についてより詳しく知ることが大切です。その上で、ライフスタイルを考慮して、自分に合った治療法を選びましょう。

☞ 参考:
3療法経験者インタビュー 松尾 裕子 さん
教えて!ドクター「Q. 透析をやめることはできますか?

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☞ 「病院を探そう!」伊丹腎クリニックのご紹介ページ

「日・米の透析患者の平均余命」の図について
1)この図に用いている統計調査結果は日本透析医学会より提供されたものです。これらの調査結果の利用および解釈は当社が独自に行っているものであり、日本透析医学会の考えを反映するものではありません。予めご了承ください。
出典:日本透析医学会 統計調査委員会「図説 わが国の慢性透析療法の現況(2005年12月31日現在)」

2)この図に用いているデータはUnited States Renal Data System (USRDS)より提供されたものです。これらのデータの解釈及び公表については当社の責に帰するもので、アメリカ合衆国政府の公的な方針や解釈を示すものではありません。予めご了承ください。
出典:United States Renal Data System. 2005 USRDS annual data report: Epidemiology of kidney disease in the United States. National Institutes of Health, National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases, Bethesda, MD, 2005.

<出典>
*1 USRDS. 2023 Annual Data Report / Reference Tables / H. Mortality and Causes of Death
*2 日本腎臓学会 他. 腎不全 治療選択とその実際(2023年版):11
*3 日本臨床腎移植学会・日本移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2022) 移植 2022;57:199-219
*4 USRDS. 2005 Annual Data Report
*5 日本透析医学会 統計調査委員会. 図説 わが国の慢性透析療法の現況(2005年12月31日現在):43-47
*6 花房規男 他. わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在) 透析会誌 2022;55:665-723
*7 前田利朗. 6時間透析における生存率-20年の経験から- 日本透析医会雑誌 2010;25:95-100


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