移植手術までの流れ

腎移植手術を受けるまでの一般的な流れについて説明します。

生体腎移植の手術までの流れ

監修:戸田中央総合病院 移植外科 部長 尾本 和也 先生

生体腎移植は、親族から2つの腎臓のうちの1つを提供してもらう治療法です。ここでは、生体腎移植の説明を受けるところから手術入院までの一般的な流れについて説明します。
(移植手術までの流れは、移植施設によって異なる場合もあります。)

※ レシピエント(腎移植を受ける人)の6親等以内の血族、配偶者、および3親等以内の姻族。

行程図

① 移植施設の受診

生体腎移植を検討するときは、まず腎移植を行っている病院(移植施設)を受診し、詳しい説明を受けます。移植施設は、慢性腎臓病の治療を受けている主治医から紹介してもらうか、ご自身で調べて受診したい移植施設があれば、主治医に相談して紹介状を書いてもらうのが良いでしょう。
☞ 腎移植の相談ができる全国の病院を紹介「病院を探そう!

移植施設の紹介

移植施設では、最終的に腎移植をする、しないに関わらず、説明を受けることができます。腎移植には、ご家族の理解や協力がとても重要です。説明を受ける際は、配偶者や両親、兄弟・姉妹など、できるだけご家族の方々に同席してもらいましょう。

家族で受診

② ドナー(腎提供する人)候補の検討

生体腎移植においてドナーになれるのは、原則として、レシピエント(腎移植を受ける人)の親族(6親等以内の血族か、配偶者または3親等以内の姻族)で、本人が自発的に腎提供を希望していることが前提です。
☞ 腎代替療法の基礎知識「腎代替療法選択の条件(生体腎ドナーになれる親族)」

親族

ドナーになるには、後述の適格性検査によって、腎提供後も健康を保てると判断される必要があります。
☞ ドクターコラム「生体腎ドナーの腎機能と健康

③ 適格性検査

生体腎移植を行うには、レシピエントおよびドナーが、それぞれの適応基準を満たしていなければなりません。そのため、レシピエントとドナーは、適格性を確認するための各種の検査を受けます。
☞ 腎代替療法の基礎知識「腎代替療法選択の条件(レシピエントの適応基準)(生体腎ドナーの適応基準)

【 主な適格性検査の項目 】
・クロスマッチ検査
・血液検査(血算、生化学、各種ウイルス抗体など)
・尿検査
・レントゲン
・心機能検査(心電図、心臓エコー、心筋シンチなど)
・肺機能検査
・CT
・MRI
・腹部超音波検査
など

※クロスマッチ検査:ドナーの腎臓を移植したときに非常に強い拒絶反応を起こさないか事前に調べる検査。レシピエント、ドナー、それぞれの血液を採取して調べます。

適格性検査の項目は、移植施設やレシピエント・ドナーの状態によっても異なります。また、レシピエントとドナーで異なる検査項目もあります。

適格性検査

上記の身体的な検査に加えて、ドナーは、精神科医や臨床心理士などの第三者によって、自発的に腎提供を希望していることが確認されます。
レシピエントも同様に、腎移植を受けるのに適した精神状態にあることが確認されます。また、レシピエントは腎移植後に免疫抑制薬を毎日服用する必要がありますので、きちんとした服薬管理ができるかなども事前にチェックされます。

適格性検査は、入院で行われる場合もあれば、外来で数日に分けて行われる場合もあります(移植施設によって異なります)。検査の結果、治療が必要な病気が見つかった場合は、その病気の治療を優先します。特に悪性腫瘍(がん)は、治療後完治して再発しないことが移植手術の条件となりますので、早期がんか進行がんかによって治療後2年間から5年間の再発がないことを確認する期間が必要になる場合があります。

移植施設は、前述の適格性検査の結果などを総合的に検討し、腎移植が可能かどうかを判断します。検討の結果、追加の検査が必要になる場合もあります。

カンファレンス

④ 腎移植の意志確認

移植施設での検討の結果、腎移植が可能と判断されると、その上で改めてレシピエントとドナーの腎移植の意志が確認されます。両者が腎移植を希望すれば、手術に向けて具体的に準備を進めていきます。
なお、一度は腎移植をしようと決めたものの、あとで意思が変わった場合でも、手術直前まで腎移植を取り止めることができます。

夫婦で受診

⑤ 手術に向けての準備・待機

移植手術の日程は、腎移植をすることが決定してから、一般的に数週間後から数カ月後に設定されます。入院時期は、ドナーは手術の1~3日前、レシピエントは、血液型不適合移植の場合は手術の1~2週間前、血液型適合移植の場合は手術の約1週間前が一般的です(移植施設やレシピエント・ドナーの状況によっても異なります)。
☞ 腎移植の基礎知識「腎移植手術について(生体腎移植の入退院スケジュール)

レシピエントは、移植手術後は免疫抑制薬を服用するため、ウイルスを弱毒化したワクチン(生ワクチン)は原則的に接種できなくなります。そのため、麻しん(はしか)、風しん、水痘(みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)に過去一度もかかったことがなく、ウイルスに対する抗体※がないレシピエントは、あらかじめこれらの感染症のワクチンを接種しておきます。また、虫歯や歯周病の治療も手術前にすませておく必要があります。
これらが全て完了してから手術日を決定します。
※抗体:体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除するように働くタンパク質。

ワクチン接種、歯科治療

手術日が決定してから手術入院までの待機期間中は、以下のようなことが大切になります。

<感染予防>
レシピエントやドナーが感染症にかかると、完治するまで移植手術が延期される場合もあります。そのため、手洗いを基本とした感染予防をしっかりと行う必要があります。同居しているご家族にも感染予防を心がけてもらいましょう。

感染予防

<腎不全治療の継続>
近年は透析導入前に腎移植を受ける方が増えていますが(*)、レシピエントの全身状態が悪いと、腎移植手術を行えない場合もあります。手術日が決まった後も、食事療法や薬物療法などの腎不全の治療をしっかりと継続することが大切です。

食事療法、薬物療法

透析導入後の患者さんが腎移植を受ける場合も同様で、透析療法、食事療法、薬物療法などをきちんと行い、全身状態をできるだけ良好に保つようにします。

透析療法

<職場や学校への説明>
移植手術から退院までの期間は移植施設や術後の状態などで異なりますが、問題がなければ術後2週間程度で退院することができます。ただし、その後しばらくは腎機能の確認や免疫抑制薬の投与量の調節などのために頻回の外来受診が必要になります。また、拒絶反応や感染症の発症によって再入院することもあります。
手術入院する前に職場や学校に事情を説明して、移植手術に伴う休暇取得や復帰時期の目安などについて理解を得ておくと良いでしょう。

職場への説明

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【参考】動画体験シリーズ「生体腎移植

<出典>
* 日本臨床腎移植学会・日本移植学会 腎移植臨床登録集計報告(2017) 移植 2017;52:113-133


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