
2018.12.20 教えて!ドクター
ドクターコラム
日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第二病院 腎臓病総合医療センター
移植内科 部長 後藤 憲彦 先生
日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第二病院
腎臓病総合医療センター 移植内科 部長 後藤 憲彦 先生
掲載日:2018/10/18
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糖尿病性腎症(Diabetic Nephropathy;DMN)は、糖尿病発症から約10年の経過で微小血管障害(微量アルブミン尿※)が出現し、次の約10年で末期腎不全に至るのが典型的な経過です(*1)。
近年、糖尿病や高血圧などに対する治療成績の向上と糖尿病患者さんの高齢化により、典型的なDMNの臨床経過ではなく、アルブミン尿の増加を伴わず腎機能が低下する症例が増加しています。
肥満、脂質異常、高血圧、動脈硬化といった糖尿病と併発しやすい病態や、加齢の影響に糖尿病が部分的に関与して腎障害を起こしている病態を糖尿病性腎臓病(Diabetic Kidney Disease;DKD)と呼びます。DKDはDMNを含んだ大きな概念です。約10年以内の糖尿病歴で腎機能障害がある時にはDKDの可能性が高く(*1)、糖尿病以外の原因検索のために腎生検を必要とすることが多いです。
※ 微量アルブミン尿:初期段階の蛋白尿。アルブミンは尿蛋白の主な成分で、糖尿病などによる腎障害の極めて初期に微量のアルブミンが尿中に排泄される。
多くの場合、DMNは腎移植後に再発します。しかし、DMN再発により移植腎喪失することは稀で、心不全や心筋梗塞、脳梗塞といった心血管疾患(Cardio Vascular Disease;CVD)によるDWFG(移植腎が生着しながら死亡;Death With Functioning Graft)が移植腎喪失の原因となることがほとんどです。
最近の腎移植医療が、DKDからのCKD患者さんに非常に効果的とされているのは以上の理由からです。では、その効果をもっと大きくするには、どうしたらよいでしょうか?
それは、免疫抑制薬継続による糖尿病悪化を最小限にすることです。そのため、移植前後にやるべきことがあります。
<移植前>
移植後3ヵ月は免疫抑制薬の内服量が多いです。免疫抑制薬の1つであるステロイドの影響や腎不全からの脱却による食欲増進は、体重増加につながります。また、前述のとおり、免疫抑制薬の副作用によって糖尿病が悪化することもあり、インスリン使用開始またはインスリン使用量の増加が必要になる場合があります。インスリンが増えれば、多くの場合、体重は増加します※。
※インスリンの脂肪合成作用などの様々な要因により、体重が増加するとされています。
これらの理由から、移植前にしっかり減量をしておく必要があります。
通常、末期腎不全下では筋肉量を維持することが難しくなります。BMIが大きい腎移植候補のCKD患者さんは、脂肪か水分の組成割合が多いことになります。PEKT希望のCKD患者さんに多い水分過剰状態の時は、PEKTを諦めて透析導入を先行させる必要があります。体脂肪は食事と運動で落としますが、DKDからのCKD患者さんでは、蛋白制限をしながら糖質制限もする難しい食事管理が求められます。減量できない時には、蛋白制限を緩めるためにいったん透析導入を必要とすることもあります。
生体腎移植ドナー候補からの腎機能提供の気持ちに応えて、患者さん自身が腎移植前後の管理をきちんとすることができれば、腎移植をうまく利用して腎不全を早期に脱却することで、患者予後が格段に良くなる時代になりました。
☞ 参考:ドクターコラム「糖尿病のCKD・透析」
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<出典>
*1 日本腎臓学会 編. CKD診療ガイド2012;32 Figure 19
*2 Go AS, Chertow GM, Fan D, et al. Chronic kidney disease and the risks of death, cardiovascular events, and hospitalization. N Engl J Med 2004;351:1296-1305
*3 Foley RN, Murray AM, Li S, et al. Chronic kidney disease and the risk for cardiovascular disease, renal replacement, and death in the United States Medicare population, 1998 to 1999. J Am Soc Nephrol 2005;16:489-495
*4 湯沢 賢, 八木澤 隆, 三重野 牧, et al 腎移植臨床登録集計報告(2017)2016 年実施症例の集計報告と追跡調査結果 移植 2017;52:113-133
*5 Makita Z, Bucala R, Rayfield EJ, et al. Reactive glycosylation endproducts in diabetic uraemia and treatment of renal failure. Lancet 1994;343:1519-1522
*6 日本腎臓学会 編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023:175-176
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