腎代替療法選択の条件

腎代替療法選択の条件

監修:熊本赤十字病院 腎臓内科 豊田 麻理子 先生

腎代替療法には、透析(血液透析または腹膜透析)と、腎移植(生体腎移植、献腎移植)があり、それぞれの治療法の特徴から、医学的な適応条件や、治療中の生活などが異なります。腎代替療法を選ぶときには、これらの情報をもとに、どの治療法が最もご自身の状態やライフスタイルに適しているかを考えます。

腎代替療法の適応と治療中の生活


血液透析

<適応条件>
重度の心疾患や動脈硬化をお持ちの場合に適応とならないこともありますが、特定の医学的な制約条件はなく、ほとんどの方に適応とされます。

<治療中の生活>
一般的には、週3回透析施設に通院し、1回あたり4~5時間の透析、さらに透析前後の準備や返血、通院時間を加えた時間を拘束されます。仕事の都合などで日中の通院が難しい場合は、夜間に透析を受けたり、在宅血液透析(自宅に透析機器を設置して行う)を行ったりする方法もあります。

☞詳しくは「通院血液透析の生活パターン」在宅血液透析の生活パターンをご覧ください。

また、一般的な血液透析では、透析を行うのは2~3日に1回のため、体に余分な水分や老廃物が溜まり過ぎないよう、水分制限、食事制限を厳しく行わなければなりません。

血液透析

<その他の考慮事項>
腹膜透析が継続できなくなったときや、移植された腎臓の機能が低下したときなど、他の腎代替療法での治療が困難になった場合の次の手段として選択することもできます。


腹膜透析

<適応条件>
過去に腹部の手術を受けている方においては、腹膜・腹腔の状態によって適応とならないことがありますが、特定の医学的な制約条件はなく、血液透析同様、ほとんどの患者さんに適応となる治療法です。
ただし、施設の医療スタッフが対応してくれる血液透析とは異なり、日々の透析液交換などはご自身もしくはご家族の方が行わなければならないので、必要な手技を習得し、自己管理できることが条件になります。

PDの生活パターン

<治療中の生活>
透析液の交換のために1日に数回、1回30分程度の時間を要しますが、病院への通院は月1回程度です。日中の透析液交換をなくし、夜間就寝中に機械を使って透析液の交換を行うシステムもあります。血液透析に比べると時間的制約が少ないことが、腹膜透析の大きな利点です。

☞詳しくは「腹膜透析の生活パターン」をご覧ください。

また、継続的に水分と老廃物の除去を行っているので、飲食の制限は血液透析よりも緩やかです。


腹膜透析出口部

ただし、透析液を出し入れするためのカテーテル(チューブ)を腹腔内に埋め込む必要があり、カテーテルの出口部から病原菌に感染することもあるため、出口部および周辺部を清潔に保つように常に注意しなければいけません。


<その他の考慮事項>
腹膜を透析膜として生涯使い続けることはできないため、治療法としての寿命があります。腹膜透析開始後、約75%の患者さんは5年未満で治療を終了しており(*1)、その後は血液透析に移行するか、腎移植を行う必要があります。


腎移植

<適応条件>
●生体腎移植
腎臓を自発的に提供していただける方(ドナー)がいることが大前提です。ドナーは、腎臓の提供を受ける方(レシピエント)の親族(6親等以内の血族と配偶者および3親等以内の姻族)でなければなりません。

親族と姻族

また、生体腎ドナーには以下のような適応条件があります。

ガイドライン
年齢は目安として設定されており、健康状態が良い方であれば、70歳を超える方でもドナーになれる可能性があります。

一方、レシピエントの適応条件は以下のとおりです。

適応基準
ドナー同様、腎臓以外の体の状態が良好であれば、高齢な方でも移植を受けられる可能性があります。

免疫抑制療法の進歩により、血液型が異なる移植や、非血縁者間の移植でも良好な成績が得られるようになりました。そのため、最近は夫婦間での移植も増えています。

●献腎移植
献腎移植では、脳死や心臓死になられた方から腎臓の提供を受けますが、そのためにはまず、日本臓器移植ネットワークの献腎移植希望登録が必要です。生体腎移植の場合と同様、全身性の感染症や活動性の肝炎、悪性腫瘍が無い事などが適応条件なので、登録後も年に1回は移植登録病院で状態のチェックを行います。

臓器提供者が現れた場合、登録されている移植希望者の中から、以下のような基準でレシピエントが選ばれます。

選択基準
登録後、実際に移植に至るまでの期間は成人では平均16年ほどで(*2)、血液透析や腹膜透析を続けながら臓器提供者が現れるまで待機します。

<治療中の生活>
腎移植は、腎臓の機能をほぼ補うことができる、現状、唯一の根本的な治療法です。移植された腎臓の生着を保つため、毎日、免疫抑制薬を服用する必要がありますが、飲食は透析に比べてほとんど制限がなく、通院も移植後約半年が過ぎれば月1回程度になりますので、多くの方がQOL(生活の質)の高い生活を送ることができます。
また、透析治療中はさまざまなリスクがあるため、原則として妊娠・出産は勧められていませんが、腎移植後は、腎機能が良好であれば妊娠・出産できる可能性があります。

☞詳しくは「腎移植ライフ」をご覧ください。

小児の場合は、透析中の成長・発達障害を、腎移植をすることによって最小限に抑えることができます。

<その他の考慮事項>
移植された腎臓がいつまで生着できるかは個々に異なります。腎機能を失う原因として最も多いのが慢性拒絶反応です(*3)。2000~2005年の間に腎移植を受けた方の1年、5年、10年生着率は、生体腎移植では97.2%、92.3%、84.9%、献腎移植では89.7%、79.2%、66.3%です(*4)。再び末期腎不全になった場合には、もう一度、腎移植を受けるか、透析療法に移行します。

☞詳しくは「移植腎の生着率と患者生存率について」をご覧ください。


相談

いずれの腎代替療法を選ぶ場合においても、患者さんそれぞれの状態やライフスタイルをより細かく確認して適応を判断します。治療法自体も日々研究が行われており、それぞれの適応が広がりつつあるので、主治医や専門医に十分に相談して、どの腎代替療法が自分にとって最適であるかを考えましょう。
また、家族による支援ができるかどうかで選択肢も異なってくるので、できるだけご家族の方と一緒に医師へ相談するようにしましょう。

☞【参考】
腎移植・腹膜透析・血液透析…どうやって治療法を選ぶ?「腎代替療法 私の選び方
動画体験シリーズ「自分にあった治療法を見つけよう~療法選択外来の実際

<出典>
*1 中山昌明, 寺脇博之 CAPD療法の変遷とPD-HD併用療法 日本腎臓学会誌 2013;55 (4) :491-497
*2 (公社)日本臓器移植ネットワーク NEWS LETTER Vol.19, 2015 : 9
*3,4 日本移植学会 2014臓器移植ファクトブック


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