2017.01.26 透析の基本情報
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透析療法は腎臓の働きを完全に代替する治療ではないので、その後の透析生活をより健康に過ごすためには、個々の患者さんに合った食事療法をしっかりと行うことが大切です。ただし、透析療法を始めると、始める前に比べて食事療法はやや緩和されます。そのため、多くの場合、透析を始める前の保存療法のときに比べれば食事を楽しむことができるようになります。
以下は、透析療法を始める前(CKDステージ4~5)の食事療法と、透析療法を始めてからの食事療法の基準を比べたものです。
透析療法を始めると、たんぱく質の摂取基準が緩くなり、その点では食事管理が比較的楽になります。一方で、リンや水分の制限が新たにでてきます。
ここからは個々の項目についてみていきましょう。
■たんぱく質は適正量をしっかりと取る
透析療法を始めると、たんぱく質は始める前の1.5倍ほど取ることができるようになります。
例えば、透析療法を始める前のたんぱく質摂取量を1日40gにしていた場合、透析療法を始めると1日60gまで引き上げられます。そうなると、それまで低たんぱく米しか食べられなかった方が、普通のごはんを食べられるようになることもあります。
一方で、たんぱく質の摂取量の基準は、上限が引き上げられるだけではなく、下限も引き上げられます。透析患者さんは、それまでの食生活に慣れてしまって十分な量が食べられなかったり、血液透析によって老廃物と一緒にたんぱく質が一部体から抜けてしまったりして、たんぱく質が不足することがあります。たんぱく質が不足すると栄養失調になってしまうので、適正な量をしっかりと取ることが大切です。
☞参考:管理栄養士コラム「食事療法の基本① タンパク質」
■リンが多く含まれる食品に注意する
透析療法を始めると、たんぱく質の摂取基準は緩和されますが、リンの摂取基準が新たに加わります(リンの摂取基準が必要な理由はこちら)。たんぱく質が多い食品には、リンも多く含まれていることが多いため、たんぱく質をしっかり取ろうとして食事量を増やすと、同時にリンの摂取量も増えやすくなります。
体に溜まったリンは、ある程度は透析によって取り除くことができます。また、摂取した食事からのリンの吸収を抑える薬もあります。たんぱく質を適正量摂取しながらリンをとりすぎないように食事内容を工夫して、透析や薬とあわせてリンをコントロールすることが大切になります。
食事の工夫としては、たんぱく質が多い食品の中でも、同時にリンも比較的多く摂取してしまう乳製品や、シラスなどの骨も一緒に食べる魚は控えめにするなどして、リンの取り過ぎに注意します。
☞参考:管理栄養士コラム「食事療法の基本② リン」
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