透析患者さんに起きやすい合併症

透析療法を続けていると、さまざまな合併症が起こることがあります。透析患者さんに起きやすい合併症について説明します。

透析患者さんの合併症③:感染症

監修:久留米大学医学部 内科学講座 腎臓内科部門 主任教授 深水 圭 先生

感染症は透析患者さんの死亡原因の第2位

透析患者さんの死亡原因の第1位は心不全ですが、第2位は感染症で、その割合は近年少しずつ増加しています。特に、透析導入して間もない患者さんは感染症で亡くなられることが比較的多く、2015年に透析導入して年末までに亡くなられた患者さんのおよそ4人に1人は感染症が原因でした(*)

透析患者さんの死亡原因推移

なぜ透析患者さんは感染症にかかりやすいか

透析患者さんは、以下のような原因によって感染症にかかりやすくなっています。

≪免疫機能の低下≫
免疫機能とは、主に病原菌や異物を排除する白血球のはたらきのことです。透析患者さんは、栄養不足や尿毒素の体内への蓄積、糖尿病の合併などのさまざまな原因で、免疫機能が低下しやすくなります。

≪透析療法に伴う感染リスクの増加≫
血液透析患者さんは、透析の度にシャント血管に針を刺す必要がありますが、針を刺す際に、周囲の皮膚についている細菌などが体内に入り込んでしまう可能性があります。そのため、血液透析患者さんは一般の方に比べて病原菌に感染するリスクは高くなります。
腹膜透析患者さんも、体外から腹腔内へとつながるカテーテルを腹部に留置していることで、感染のリスクが高くなります。

シャント
カテーテル

≪腎不全に伴う感染リスクの増加≫
尿路
また、透析患者さんは、尿量が少ない、もしくは尿が出ないため、排尿によって尿路を十分に洗い流すことができない場合が多いです。そのため、大腸菌などの細菌が尿路をさかのぼってきやすくなります。



透析患者さんの易感染状態の原因

透析患者さんがかかりやすい感染症

結核
肺炎、結核
咳などで飛び散った肺炎球菌や結核菌を吸いこむことで発症します。風邪やインフルエンザが発端になって肺炎を起こすこともあります。
これらの感染症は、透析患者さんの場合、重症化しやすいとされています。

尿路感染症
大腸菌など陰部の細菌が尿道から侵入して、膀胱炎や腎炎を引き起こします。発熱を伴い、下腹部の不快感や血尿などの症状が現れることもあります。

シャント血管の感染症(血液透析患者さんの場合)
透析針を刺した部位から細菌が侵入して発症します。感染部位が赤く腫れ、痛みや熱を伴います。高熱が出た場合は、細菌が全身にまわっている可能性があるため、早急に抗生物質などの治療が必要です。

腹膜炎、カテーテル関連感染症(腹膜透析患者さんの場合)
腹膜炎
腹膜炎は、カテーテル内を通じて、あるいはカテーテル出口部から、腹腔内に細菌が侵入することで発症します。腹腔から排出した透析液がにごり、腹痛や悪心・嘔吐、発熱などの症状を伴います。重症化すると命にかかわる場合もあります。
カテーテルの出口部周辺や、カテーテルの通り道(トンネル部)が感染を起こすこともあります。出口部から膿が出た場合は感染症が疑われます。また、患部が赤くなる、腫れる、痛むなどの症状が現れます。こちらも早急な抗生物質での治療が必要になります。

感染症の対策

<免疫機能の低下を抑える>
・医師や栄養士の指導に基づいた食事療法で、必要とされる栄養を確保します。
・十分に透析を行って、尿毒素をしっかりと取り除きます。

食事と透析

<感染のリスクを減らす>
・帰宅時などに、手洗い、うがいを励行します。人ごみではマスクの着用も勧められます。
・インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種を受けます。
・常にからだを清潔に保ちます。血液透析患者さんはシャント血管周辺、腹膜透析患者さんはカテーテル出口部周辺を特に入念にケアします。
・腹膜透析患者さんは、日ごろからカテーテルの出口部を清潔な状態に保ち、透析液バッグの交換の際の手技に十分気を付けます。
手洗いうがいワクチン

透析患者さんは免疫機能が低下しているため、感染を起こすと重症化することがあります。そのため、予防とともに早期の治療が重要です。発熱、咳、皮膚の異常、排尿の異常などを感じたら、早めに医師に相談しましょう。

* 日本透析医学会 統計調査委員会「図説 わが国の慢性透析療法の現況(2015年12月31日現在)」:22


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