生体腎移植者 山上隆さん(仮名)
生体腎移植者 山上隆さん(仮名)
2017.08.31 レシピエントインタビュー
腎移植者インタビュー
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Chapter3: 体調が回復した腹膜透析
----- その後、どのようなきっかけで生体腎移植を受けることになったのですか。
大脇さん:
腹膜透析を始めて4年ほど経った頃、臍(さい)ヘルニア※になりました。私は趣味で合唱をしているのですが、発声練習をすると腹圧がかかるので、ヘルニアが出てきてひどく痛みました。このままでは、ヘルニアも悪くなっていくし、合唱も続けられなくなるので、ヘルニアの手術を受けることを検討しました。その時に、日髙先生から改めて生体腎移植のお話があったのです。
※ 臍ヘルニア:腹膜透析の合併症の1つで、お腹の中に溜めた透析液によって圧力がかかり、組織の弱いおへその部分が出っ張ってしまう。
日髙先生:
ヘルニアを手術しても、さほど遠くないうちに血液透析への移行が必要になると思われたので、生体腎移植についても考えてみてはどうかとお話ししました。
大脇さん:
妻も「自分がドナー(腎提供する人)になるから」と言ってくれました。ドナーが腎提供後に末期腎不全になるリスクは高いわけではないと理解していましたが、妻も若くはありませんし、万が一、手術時や腎提供後に何かあったらと考えると、ドナーになってもらうことには気が引けました。依然として、腎移植に対するトラウマもありました。
しかし、日髙先生が生体腎移植について懇切丁寧に説明してくれ、妻も非常に積極的に勧めてくれたので心が動きました。いずれにしてもヘルニアの手術が必要であることもきっかけとなり、生体腎移植を受ける決心をしました。
大脇さんと奥様(京都北野天満宮にて)
日髙先生:
大脇さんの奥様は、月1回の腹膜透析外来にも必ず同伴されていたので、生体腎移植の説明も大脇さんと一緒に聞いていただきました。患者さんとそのパートナーが一緒に腎移植の説明を聞くと、患者さんが拒否しても、むしろパートナーの方が「自分の腎臓をあげるから」と言って腎移植に積極的になることがよくあります。パートナーが病気や治療法の話を聞き、患者さんの状況を理解すると、より良い状況にすることがお互いのハッピーにつながると考えるようになるのだと思います。ですから、生体腎移植を検討する際には、まず患者さんとご家族の方が一緒に説明を聞いていただくことが大事です。
もちろん、それは腎移植に限ったことではなく、透析療法を選ぶ場合でも同じで、患者さんとご家族にとってのベストな選択肢を選んでいただくために、一緒に治療法の説明を聞いて理解していただきたいです。大脇さんの奥様のように常に一緒に外来受診することは難しいと思いますが、腎代替療法の選択は、患者さんとご家族のその後の生活に大きく影響しますので、腎代替療法の説明のときには、できるだけご家族に同席していただきたいと思います。
----- 大脇さんの場合、腎移植について知っていても、ご友人の死がきっかけで腎移植を受け入れにくかったようですが、一般的には、まだ腎移植についての誤解が多いのでしょうか。
日髙先生:
最近は、著名人の方が腎移植を受けたニュースをよく目にするようになったので、以前よりは腎移植について認知されてきていると思います。ただ、ドナーとレシピエント(腎移植を受ける人)の血液型が異なると移植ができないとか、若い方でなければ移植を受けられないといった誤解はまだまだ多いと思います。
大脇さん:
ドナーについての誤解が一番多いように感じますね。私の場合、妻がドナーになってくれましたが、それを伝えるとよく驚かれます。親や兄弟・姉妹といった血縁者しかドナーになることができないと思っている方は多いです。また、私と妻は血液型が異なるのですが、それについても、移植ができたことに驚かれる方は多いです。
☞ 参考:腎移植の基礎知識「夫婦間腎移植」「ABO血液型不適合移植」
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