慢性腎臓病の原因疾患

慢性腎臓病の原疾患(原因疾患)にはさまざまなものがあります。

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C3腎症(2025年10月改訂)

監修:大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授 猪阪 善隆 先生

近年新しく分類された病気

慢性腎臓病の原因疾患の1つに、慢性糸球体腎炎があります。慢性糸球体腎炎にはいくつかのタイプがあり、その中に膜性増殖性糸球体腎炎があります。近年、研究が進み、膜性増殖性糸球体腎炎のうち、C3という「補体」が特に関係しているものを、C3(シー・スリー)腎症と呼ぶようになりました。

原因疾患


C3腎症が起こるメカニズム

C3腎症は、免疫のしくみのひとつである「補体」の異常が関与する病気です。
補体には細菌やウイルスなどの異物から体を守る役割があります。
正常な人では、この補体の活動が抑えられており、感染や異物などがないときは、必要以上に活性化しないように抑制する機能が備わっています。
C3腎症ではこの機能が過剰にはたらいてしまうことで、"C3"という補体たんぱく質などが腎臓で"ふるい"の役割を果たす糸球体に沈着する結果、糸球体の炎症を引き起こしていると考えられています。炎症が続くと、腎臓は障害を受けて腎機能が低下していきます。

機序
機序1

腎臓は糸球体のはたらきにより、血液をろ過して不要な成分を除去しています。補体は、正常時には、必要以上に活性化しないように制御されています。


機序2
(イメージ図)

C3腎症では、補体が過剰にはたらいています。このため、血液が腎臓に流れる際、C3という補体たんぱく質などが糸球体に沈着し、蓄積していきます。この蓄積が、炎症を引き起こし、腎機能を低下させます。

小児でも発症する難病

C3腎症は新しく分類された病気であり、患者数にかかわる十分な調査結果はまだありませんが、まれな病気であり、また、小児でも発症することがわかっています。

C3腎症を含む膜性増殖性糸球体腎炎は、原因や発症メカニズムが明らかになっていないことや、患者数が少ないことなどから、国が定める難病の1つとされています。指定された条件を満たしている場合、医療費の助成を受けることができます。

※ 一次性膜性増殖性糸球体腎炎(原因となる病気がなく発症する膜性増殖性糸球体腎炎)を難病として定めています。

☞ 慢性腎臓病の基礎知識「慢性腎臓病にかかわる医療費助成制度について

☞ 参考:C3腎症患者さんとご家族向け特設コンテンツ

進行すると、透析や腎移植が必要になる場合も

むくみ
C3腎症を含む膜性増殖性糸球体腎炎は、50%以上の患者さんで、経過中にネフローゼ症候群を伴うとされています(*1)。ネフローゼ症候群になると、脚や顔などにむくみが現れたり、血液中の悪玉コレステロールが増えたり、血液が固まりやすくなったりします。

C3腎症を含む一次性膜性増殖性糸球体腎炎では、無治療の場合は、10〜15年で50〜60%が末期腎不全(まっきじんふぜん)に至るといわれています(*2)。末期腎不全へと進行した際は、 透析腎移植など、腎代替療法(じんだいたいりょうほう)と呼ばれる治療が必要となります。

☞ 透析ライフ「通院血液透析の生活パターン

※明らかな原因疾患がないものを一次性、膠原病や感染症などに続発するものを二次性と呼び、区別されています。

病気の進行と治療の目安
(イメージ図)
NPO法人 腎臓サポート協会 腎不全とその治療法より改変

C3腎症の診断から1年が経過した時点で尿たんぱく量が少ない患者さんは、腎不全になるリスクも低いという研究結果もあります(*3)
腎臓の障害が進行すると元には戻らないため、定期的に尿たんぱくやeGFRを確認しながら病状を管理していくことが重要です。

主な治療法

C3腎症は完治させることが難しいため、基本的には、飲み薬などによる薬物療法や食事療法を継続することが必要になります。

【薬物療法】
薬物療法には、免疫抑制療法(糸球体の炎症を抑える方法)や支持療法(腎臓の負担を軽減する方法)があります。
治療には、飲み薬の他に、点滴などの注射薬が用いられる場合もあります。

免疫抑制療法(糸球体の炎症を抑える方法)
免疫システムの異常によって糸球体に蓄積した補体(C3)が炎症を起こしているため、過剰な免疫を抑制したり、炎症を抑えたりすることを目的とした治療が行われます(*4)

糸球体の炎症の抑制

支持療法(腎臓の負担を軽減する方法)
腎機能が低下すると、体に余分な水分が溜まり、血液量が増えて、高血圧を生じやすくなります。
しかも、高血圧は腎臓に負担を与えるため、悪循環が生じます。
この悪循環を止め、腎臓にかかっている負担を小さくするために、血圧を下げるお薬が用いられます(*5)
高血圧と腎機能低下の悪循環


C3腎症の治療薬

※ノバルティスの薬で治療を受けている患者さんとご家族の方は、こちらをご覧ください。
医療機関で処方されたお薬情報(患者さん向け):C3腎症

【食事療法】
食事療法では、腎臓の負担を軽減するため、ネフローゼ症候群や腎機能障害の程度に応じて、塩分・たんぱく質の摂取制限を行います。
食事療法


C3腎症は、近年新しく分類された病気のため、十分に治療法が確立しているわけではありません。しかし、前述のように発症のメカニズムが少しずつ分かってきており、より適切な新しい治療法の開発が期待されています。

※ 治療は必ず主治医の指示のもとに行い、分からないことや不安なことがあれば、主治医に相談しましょう。

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<出典>
*1 矢崎義雄(編)内科学 第11版 朝倉書店
*2 難病情報センター 一次性膜性増殖性糸球体腎炎(指定難病223) https://www.nanbyou.or.jp/entry/4424 (2025年9月閲覧)
*3 Masoud S, et al., Kidney Int. 2025; 108: 455-469.
*4 Smith RJH, et al., Nat Rev Nephrol. 2019; 15(3): 129-143.
*5 日本腎臓学会編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン. 2023 P21-22.


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