
今後、どのようになるのですか?
教授 猪阪 善隆 先生
2022.03.28 教えて!ドクター
慢性腎臓病の原疾患(原因疾患)にはさまざまなものがあります。
監修:大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授 猪阪 善隆 先生
慢性腎臓病の原因疾患の1つに、慢性糸球体腎炎があります。慢性糸球体腎炎にはいくつかのタイプがあり、その中に膜性増殖性糸球体腎炎があります。近年、研究が進み、膜性増殖性糸球体腎炎のうち、C3という「補体」が特に関係しているものを、C3(シー・スリー)腎症と呼ぶようになりました。

C3腎症は、免疫のしくみのひとつである「補体」の異常が関与する病気です。
補体には細菌やウイルスなどの異物から体を守る役割があります。
正常な人では、この補体の活動が抑えられており、感染や異物などがないときは、必要以上に活性化しないように抑制する機能が備わっています。
C3腎症ではこの機能が過剰にはたらいてしまうことで、"C3"という補体たんぱく質などが腎臓で"ふるい"の役割を果たす糸球体に沈着する結果、糸球体の炎症を引き起こしていると考えられています。炎症が続くと、腎臓は障害を受けて腎機能が低下していきます。


腎臓は糸球体のはたらきにより、血液をろ過して不要な成分を除去しています。補体は、正常時には、必要以上に活性化しないように制御されています。

C3腎症では、補体が過剰にはたらいています。このため、血液が腎臓に流れる際、C3という補体たんぱく質などが糸球体に沈着し、蓄積していきます。この蓄積が、炎症を引き起こし、腎機能を低下させます。
C3腎症は新しく分類された病気であり、患者数にかかわる十分な調査結果はまだありませんが、まれな病気であり、また、小児でも発症することがわかっています。
C3腎症を含む膜性増殖性糸球体腎炎は、原因や発症メカニズムが明らかになっていないことや、患者数が少ないことなどから、国が定める難病の1つとされています※。指定された条件を満たしている場合、医療費の助成を受けることができます。
※ 一次性膜性増殖性糸球体腎炎(原因となる病気がなく発症する膜性増殖性糸球体腎炎)を難病として定めています。
☞ 慢性腎臓病の基礎知識「慢性腎臓病にかかわる医療費助成制度について」
☞ 参考:C3腎症患者さんとご家族向け特設コンテンツ


C3腎症は完治させることが難しいため、基本的には、飲み薬などによる薬物療法や食事療法を継続することが必要になります。
【薬物療法】
薬物療法には、免疫抑制療法(糸球体の炎症を抑える方法)や支持療法(腎臓の負担を軽減する方法)があります。
治療には、飲み薬の他に、点滴などの注射薬が用いられる場合もあります。
●免疫抑制療法(糸球体の炎症を抑える方法)
免疫システムの異常によって糸球体に蓄積した補体(C3)が炎症を起こしているため、過剰な免疫を抑制したり、炎症を抑えたりすることを目的とした治療が行われます(*4)。




※ 治療は必ず主治医の指示のもとに行い、分からないことや不安なことがあれば、主治医に相談しましょう。
<出典>
*1 矢崎義雄(編)内科学 第11版 朝倉書店
*2 難病情報センター 一次性膜性増殖性糸球体腎炎(指定難病223) https://www.nanbyou.or.jp/entry/4424 (2025年9月閲覧)
*3 Masoud S, et al., Kidney Int. 2025; 108: 455-469.
*4 Smith RJH, et al., Nat Rev Nephrol. 2019; 15(3): 129-143.
*5 日本腎臓学会編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン. 2023 P21-22.

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