ドクターコラム

腎移植の適応
―どのような人が移植できるのか? 生体腎ドナーになれるのか?―

腎移植の適応
どのような人が移植できるのか?
生体腎ドナーになれるのか?

大阪大学大学院医学系研究科 招聘教授
関西メディカル病院 腎移植科 部長 高原 史郎 先生

大阪大学大学院医学系研究科 招聘教授
関西メディカル病院 腎移植科 部長 高原 史郎 先生

腎移植の適応 ~ どのような人が移植できるのか? 生体腎ドナーになれるのか?

掲載日:2016/02/12

☞ 「病院を探そう!」大阪大学医学部附属病院のご紹介ページ

まずレシピエント(腎臓の提供を受ける人)の適応を説明しましょう。

① 生体腎移植について

手術
現在、血液透析あるいは腹膜透析治療を受けている方が適応ですが、最近では、透析治療を始める前に生体腎移植を行う「先行的腎移植」が広まっています。これは欧米の「透析治療開始前に腎移植を行う方が、透析治療を行ってから移植をするよりも、移植後の成績が良い」という臨床研究(*1~3)の結果を反映しています。
年齢に関しては70歳くらいまでに行うのが安全ですが、これはその人の体の状態によります。つまり、コントロールできていない糖尿病や高血圧などの重い合併症がなければ、70歳以上でも腎移植が可能な場合が多いのです。

高齢者の腎移植

生体腎移植はドナー(腎臓の提供者)とレシピエントの血液型(ABO型)が異なっていても可能です。たとえば提供する人がA型、もらう人がB型でも移植できます。

ABO血液型不適合移植

最近では夫婦間移植が生体腎移植の約40%と増えてきました(*4)(2021年に行われた生体腎移植においては約43%(*5))。夫婦は元々他人ですので、組織適合性(腎臓を提供する人ともらう人の型、相性が良いか悪いか)が大きく異なっている場合が多く、拒絶反応が起こりやすかったのですが、免疫抑制剤の進歩によって、最近では親子間の移植や兄弟間の移植に負けない移植成績を得られるようになりました。

夫婦間腎移植

様々な合併症をお持ちの方も多いでしょうが、あれこれ思い悩む前に、まずは地元の移植病院を受診してください。最近はレシピエント移植コーディネーターが在籍する移植病院が増えていますので気軽に相談できます。まずは相談です。

☞ 【参考】
腎代替療法の基礎知識「腎移植希望者の適応条件
腎移植の基礎知識「腎移植手術の費用
腎移植者インタビュー

② 献腎移植(死体腎移植)について

献腎移植とは、亡くなられた方から腎臓を提供していただく腎移植のことです。適応は原則として生体腎移植と同じです。ただし、平均して10年以上待機しないと腎提供を受ける機会がまわってこないことが多く、そのため糖尿病などの重い合併症のある方はせっかく移植希望の登録をしても移植できない場合も少なくありません。やはり一人で思い悩まずに移植医・レシピエント移植コーディネーターと相談してください。
※ 2002年1月のレシピエント選択基準改正後の登録日から移植日までの平均待機期間(膵腎同時・肝腎同時移植を除く)は、2021年末時点で5,398.4 日(約14年8カ月)となっています(*6)

現在では、一定の腎機能低下症例であれば先行的腎移植として透析治療開始前から献腎移植の申し込み・登録をすることも可能ですが、やはり待機期間が長いため、移植前に透析開始となります。

献腎移植の条件

次にどのような人が生体腎移植のドナーになれるのか?を解説します。

③ 生体腎移植のドナーについて

通院
日本移植学会のガイドラインでは80歳までが生体腎移植のドナーの適応となっていますが、まず現在の腎機能を詳しく検査する必要があります。片方の腎臓を提供しても、残りひとつの腎臓でその後20年以上大丈夫か?という確認が必要です。最近では正確に腎機能、特に腎臓の予備力がどのくらいあるのかを検査できるようになりました。この検査はイヌリン・クリアランス法という検査法で健康保険の適用にもなっています。生体ドナーは腎臓を提供したことによってどのような不利益も被ってはなりません。
また現在、生体腎移植のドナーの半分くらいが60歳以上です(*4,5)。つまり何らかの持病のある方も少なくありません。ドナーになっても大丈夫か?移植医やレシピエント移植コーディネーターに相談してください。自分の思い込みで「ドナーになっても大丈夫」「ドナーにはなれないのではないか?」決めてしまうことは間違いの元です。やはり早めの受診をお勧めします。

☞ 参考:教えて!ドクター「血圧や血糖値が高めでもドナーになれますか?

重要なことはドナー手術(腎提供の手術)が終了し退院しても、その後毎年、移植外来を受診することです。手術後何年も経ってから、少しですが血圧が上昇する場合もあります。早めの診断と治療が重要です。
ドナー手術によって健康の重要さに目覚め、全身チェックの意味で年に一度は移植外来に来てください。

☞【参考】
腎代替療法の基礎知識「生体腎ドナーの適応条件
ドクターコラム「生体腎ドナーの腎機能と健康
腎移植ライフ「腎提供後の生体腎ドナーの自己管理
生体腎ドナーインタビュー

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☞ 「病院を探そう!」大阪大学医学部附属病院のご紹介ページ

<出典>
*1 Mange KC, et al. N Engl J Med 2001;344:726-31
*2 Kasiske BL, et al. J Am Soc Nephrol 2002;13:1358-1364
*3 Meier-Kriesche HU, et al. Transplantation 2002;74:1377-1381
*4 日本移植学会・日本臨床腎移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2018)移植 2018;53:89-108
*5 日本移植学会・日本臨床腎移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2022)移植 2022;57:199-219
*6 日本臓器移植ネットワーク. NEWS LETTER 26,2022:7


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