腎移植の適応と手術までの流れ

腎移植手術を受けるまでの一般的な流れについて説明します。

献腎移植の手術までの流れ

監修:友愛医療センター 移植外科 部長 大田 守仁 先生
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献腎移植は、脳死や心停止された方から腎臓の提供を受ける治療法です。2021年には日本国内で125件の献腎移植が行われています(*1)。ここでは、献腎移植の移植希望登録から腎移植手術までの一般的な流れについて説明します。

行程図

① 移植希望登録

献腎移植を受けるためには、まず、日本臓器移植ネットワークに移植希望登録をする必要があります。登録申請ができる条件は、透析治療を受けていること、もしくは、透析導入前であれば、以下の2つの条件を満たしていることです(*2)

1)申請時から1年前後で腎代替療法が必要になると予測される進行性腎機能障害の場合
2)(19 歳以上の場合)eGFR が 15 mL/min/1.73㎡ 未満


登録申請のためには、腎移植を行っている病院(移植施設)を受診する必要があります。受診する移植施設は、最終的に腎移植を受ける施設であり、ご自身で自由に選ぶことができます。受診の際には、主治医に相談して、希望する移植施設を紹介してもらいます。移植施設で検査や診察を受け、移植可能と判断されれば、所定の手続きを経て登録が完了します。なお、新規登録の際には登録料(30,000円:2019年2月現在)が必要です。

日本臓器移植ネットワーク 移植施設一覧

移植希望登録

② 待機

献腎移植の機会を待っている移植希望登録者は、全国で約14,000人います(*3)(2023年10月末時点)。腎臓の提供者(ドナー)が現れると、移植希望登録者の中から、献腎移植の候補者が順次選ばれます。候補者は、ドナーとの血液型適合度や待機日数などから判断されて選ばれます。

レシピエントの選択基準

献腎移植の機会が訪れるまでは、移植希望登録の更新や、献腎移植に向けての準備をしながら待機します。

1)移植希望登録の更新

待機期間中は、毎年1回以上、移植施設を受診して診察と評価を受け、その結果をもって移植希望登録を更新します(更新料は5,000円:2019年2月現在)。移植施設を受診しないと登録が更新されないので、毎年欠かさず受診する必要があります。なお、定期受診する移植施設(最終的に腎移植を受ける施設)は、待機期間中に変更することも可能です。

診察・採血


2)献腎移植に向けての準備

体調管理
待機期間中は、いつでも腎移植が受けられるように、日々の体調管理を怠らないことが大切です。

<自己管理>
風邪などの感染症にかかっていると、腎移植が受けられません。また、太りすぎている場合も腎移植を受けられない場合があります。そのため、規則正しい生活をし、体調維持を心がけます。

自己管理

<透析治療>
病院の方針に従って、しっかりとした透析治療を続け、体をできるだけ良い状態に保ちます。

透析療法

<定期健診>
全身の感染症やがんがあると、腎移植を受けることができません。定期的に健康診断を受け、病気の早期発見・早期治療に努めます。

健診

身の周りの準備、心構え
移植手術の連絡は突然やってきますので、いつでも対応できるように、常に身の周りの準備や心構えをしておくことも大切です。

<職場や家族の理解を得る>
移植を受けることになると、急に入院して、しばらく会社をお休みすることになりますので、普段から職場や家族の理解を得ておく必要があります。

職場への説明

<いつ電話があっても対応できる準備をしておく>
移植手術の連絡の電話は、夜中にかかってくることも多いので、昼夜を問わず、いつでも電話に出られる状態にしておきます(電話がつながらない場合、この機会に献腎移植を受ける権利が次の方に移ってしまいます)。また、移植を受ける場合はすぐに入院になるので、必要なものを予め考えておくなどして、速やかに入院ができるよう備えます。

連絡への準備

<自分の意思を再確認する>
移植手術の連絡が来たときに、手術を受けることを迷わず決断できるように、定期的に自分の意思を再確認することも大切です。

決意

移植希望登録から実際に移植を受けるまでの待機期間は、平均約14年8カ月です(*4)
近年は生体腎移植の適応が広がっており、2017年には1,500件以上の生体腎移植が行われています(*1)。生体腎移植など、他の治療法の新しい情報を定期的に得て、治療選択について再検討することも、待機期間中に行えることの1つです。
※ 20歳未満の場合、優先的に移植が受けられるため、待機期間は一般的に短くなります。

☞ 腎移植の基礎知識「ABO血液型不適合移植」「夫婦間腎移植」「高齢者の腎移植

③ 移植手術の電話連絡

献腎移植の候補者に選ばれると、移植施設から電話連絡が入ります(日本臓器移植ネットワークからではありません)。電話から短時間(30分~1時間程度)で、移植を受けるかどうかを決断する必要があります。
移植を受けると決断したら、すぐに移植施設に向かい、検査を受けます。検査の結果、移植が受けられないと判断される場合もあります。
検査結果などの詳しい説明の後、移植の最終決定が行われます。通常、最終決定から移植手術までの期間は半日~数日程度ですが、ドナーの状態によっては、手術まで数週間かかることもあります。

移植の連絡から手術まで

献腎移植は、ドナーとそのご家族の善意があって初めて成り立ちます。彼らの思いを十分に理解した上で移植に臨むことも、大変重要です。

⇒ 腎移植の基礎知識「腎移植手術について(レシピエントの手術方法)

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<出典>
*1 日本移植学会・日本臨床腎移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2022)移植 2022;57:199-219
*2 日本臓器移植ネットワーク 先行的献腎移植(透析療法開始前の死体腎移植)の登録について(医療関係者向け)
*3 日本臓器移植ネットワーク ホームページ
*4 日本臓器移植ネットワーク NEWS LETTER 26,2022:7


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