食事療法を知る

慢性腎臓病の進行を遅らせるための食事療法のポイントと食事療法基準

増子記念病院 管理栄養士 朝倉 洋平 先生

慢性腎臓病の進行を遅らせるための食事療法のポイントと食事療法基準

掲載日:2016/04/07

押さえておくべき食事療法3つのポイント

~タンパク質・塩分・エネルギーのコントロール~

1)食事療法のポイント ~3つのポイントを押さえましょう~

■慢性腎臓病の食事療法とは
慢性腎臓病の進行を遅らせるための総合的な管理を保存療法といいます。保存療法には、薬物療法生活習慣の改善食事療法運動療法などがあります。その中でも、食事療法はとても大切です。食事療法は、一般的には、腎臓の機能が正常の60%を下回るときから開始されます。
食事療法の目的は、体調を良好に保ちつつ、慢性腎臓病の進行を遅らせることです。規則正しい生活習慣と食事療法によって、透析の導入時期や腎移植を行わなければならない時期を遅らせることも可能となります。
食事療法の基本を理解し、主治医や管理栄養士と相談しながら、実践していきましょう。

■食事療法のポイント
慢性腎臓病の食事療法のポイントは、大きく次の3つです。


① タンパク質の制限
タンパク質は体内でアミノ酸となり、身体を構成するために使用されます。通常、必要以上に摂取したタンパク質は、老廃物(尿素窒素など)として腎臓から尿中に排泄されます。しかし、腎臓の機能が低下した場合、老廃物の排泄低下により、
 ・老廃物が腎臓に負担をかけ、腎機能を悪化させてしまう。
 ・血液中の老廃物が蓄積し、尿毒症の症状を引き起こしやすくなる。
このようなことを防ぐため、タンパク質の摂取は腎臓の機能に合わせて、適正な量に制限する必要があります。
ただし、タンパク質は身体を構成する重要な栄養素でもあり、制限を行う上でも、必要量は確保しなければなりません。また、同じ量のタンパク質でも、タンパク質の質が悪ければ老廃物となって体内に蓄積されてしまいますが、質が良ければ効率よく身体の構成成分となります。よって、タンパク質の制限を行う上では、単にタンパク質を控えるだけでなく、限られた量の中でも、できるだけ「良質なタンパク質」(肉・魚・卵・牛乳・乳製品類など)を選ぶことが重要です。

☞参考「腎臓病食の調理の基本:タンパク質の制限

②良質なタンパク質


② 塩分の制限
腎臓は、体内の水分と電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなど)のバランスを調節しています。腎臓の機能が低下すると、塩分の取り過ぎにより身体の中に水分をため込んでしまい、浮腫(むくみ)や高血圧の原因となります。高血圧は腎臓の機能に過剰な負担をかけ、腎機能低下の進行を早めてしまいます。そのため、適正な塩分の制限が必要となります。

☞参考「腎臓病食の調理の基本:食塩の制限

③調味料加工食品


③ 適正なエネルギーの確保
体調を維持するためには、十分なエネルギーを確保する必要があります。しかし、腎臓への負担を減らすために、タンパク質を制限すると食事からのエネルギーが不足しやすくなります。エネルギーが不足すると身体のタンパク質(筋肉など)を壊してその不足分を補おうとします。そのため、エネルギー不足は、タンパク質を多く摂取したときと同様に、血液中の老廃物が増加し、腎臓に過剰な負担がかかってしまいます。
十分なエネルギーはタンパク質を含まない「砂糖、油」で補いましょう。

☞参考「腎臓病食の調理の基本:適正なエネルギーの確保

④砂糖と油


■カリウムの制限について
慢性腎臓病では、ステージ(病期)や症状に合わせて、カリウムを制限する必要があります。
・カリウムの制限
腎臓には、体内のカリウムを尿中へ排泄する働きがあります。腎臓の機能が低下すると、体内のカリウムを十分に尿中へ排泄することができなくなり、高カリウム血症をきたすことがあります。カリウムが血液中に多くたまると、心臓に負担がかり、不整脈などの心疾患の原因となります。
カリウムは、さまざまな食品に元々含まれていますが、特に多く含む食品は「果物、芋、海藻、野菜類」などです。まず、これらの食品を日々の食事の中で、過剰に摂取しないことが必要となります。場合によっては、これらの食品を一部、制限しなければならないこともあります。また、タンパク質を多く含む食品はカリウムも多く含む傾向があります。そのため、タンパク質の制限を行うことで、ある程度は、同時にカリウムを制限することができます。

☞参考「腎臓病食の調理の基本:カリウムの制限

⑤カリウムの多い食品


■糖尿病性腎症の方の食事療法
糖尿病性腎症の食事療法は、ステージ(病期)によって異なります。糖尿病性腎症の早期には、厳格な血糖コントロールを優先した糖尿病の食事療法を継続する必要があります。ステージ(病期)が進行した場合、血糖コントロールに加え、その腎臓の機能に応じたタンパク質や塩分の制限も重要となります。

糖尿病食と糖尿病性腎症食の違い


糖尿病性腎症は、血糖コントロールの程度や腎症の進行具合、高血圧・脂質異常症などの合併症も考慮する必要があります。

2)慢性腎臓病の食事療法基準

慢性腎臓病の食事療法はステージ(病期)によって異なります。

<慢性腎臓病の方の食事療法基準> (*1)
●タンパク質
 CKDステージ1、2  ・・・・・ 過剰な摂取をしない
 CKDステージ3a  ・・・・・・ 0.8~1.0g/kg 体重/日
 CKDステージ3b、4、5 ・・・ 0.6~0.8g/kg 体重/日

●食塩
 3g/日以上6g/日未満

●摂取エネルギー量
 25~35kcal/kg 体重/日
 ・エネルギーや栄養素は、適正な量を設定するために、合併する疾患(糖尿病、肥満など)
  のガイドラインなどを参照して病態に応じて調整する。性別、年齢、身体活動度などに
  より異なる。
 ・体重は基本的に標準体重(BMI=22)を用いる。
  ※標準体重=身長(m)×身長(m)×22
  (例)身長:168㎝の方の場合:1.68(m)×1.68(m)×22=62.1㎏

食事療法は患者さんの状態によって、その内容は大きく変わります。
必ず主治医や管理栄養士の指導を受けながら、実践してください。

*1 日本腎臓学会 慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版


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